夜の暮らしを変えた行灯と菜種油
江戸時代の人々の生活リズムを大きく変えたもう1つの要素が、照明用の油の普及です。江戸時代の前半までは、夜を明るく照らす手段は限られており、日が沈めば人々の活動もほぼ終わっていました。
ところが江戸時代の中ごろになると、菜種油と呼ばれる油を使った「行灯(あんどん)」という照明道具が、庶民の家庭にも広く普及していきます。行灯は、油に浸した芯に火をつけて明かりをとる道具です。
夜でも明るさを確保できるようになったことで、人々が起きて活動できる時間そのものが長くなりました。この変化が、実は食事の時間帯やリズムにも影響を与えることになります。次のページでは、灯りに関する言葉の話を少し紹介します。
「油を売る」という言葉の意外な由来
灯りに使われた油は、当時の暮らしに深く関わっていたため、言葉の中にもその名残が残っています。例えば「油を売る」という慣用句は、仕事の途中で無駄話をしてサボることを指しますが、これは油売りの商人が客先で世間話をしながら商売をしていたことに由来すると言われています。
また「行灯」という言葉自体も、今では飲食店の看板照明などを指す言葉として使われ続けています。灯りの存在が、それだけ人々の暮らしに身近だったことが分かります。
夜でも活動できる時間が増えたことで、江戸の町には夜まで営業する店や、夜遅くまで働く人たちの姿も見られるようになっていきました。次のページでは、菜種油がどのように広まっていったのか、その流れを見ていきます。
