メルカトル図法のどこがそんなに便利だったのか
メルカトル図法の最大の特徴は、「角度が正しい」ということです。専門的には「正角図法」と呼ばれますが、これは地図の上のどんな場所でも、角度の関係がゆがまずに保たれる、という意味です。
たとえば地図上で北から東へ45度の線を引いたとします。メルカトル図法なら、実際に船がその方角のままコンパスに従って進むと、地図の直線どおりの航路をたどることができます。
この、常に同じ角度で進める航路のことを「等角航路」と呼びます。目的地までずっと同じ方角を保ったまま進めるので、当時の航海士にとってはこれ以上ないほど扱いやすい地図でした。
ただし、この「角度の正しさ」を実現するためには、ある大きな代償を払う必要がありました。
便利さと引き換えに、犠牲になったもの
地球儀を思い浮かべてみてください。赤道の周りは横の線(緯線)がぐるりと長く、北極や南極に近づくほど、その横の線はどんどん短くなっていきます。
ところがメルカトル図法では、この緯線をすべて同じ長さの直線として描きます。本当は短いはずの北極付近の線を、赤道と同じ長さまで無理やり引き伸ばしているのです。
そして角度を正しく保つためには、横方向だけでなく縦方向も同じ比率で引き伸ばす必要があります。その結果、緯度が高くなるほど、陸地の面積がどんどん実際より大きく表現されてしまうのです。
「角度を正しくする」という便利さの裏側で、「大きさの正確さ」が静かに犠牲になっていた。これが、私たちが今も見ている世界地図の隠れた仕組みです。
