メルカトル図法が生まれた本当の目的
メルカトル図法は、もともと国の大きさを正しく見せるために作られた地図ではありません。目的は「航海で使いやすい地図」を作ることでした。
当時の船乗りは、方位磁石(コンパス)を頼りに海を渡っていました。「北から東に30度の方向へ進む」といった具合に、決まった角度のまま真っすぐ進む航海の方法が主流だったのです。
ところが、それまでの地図では、地図の上に引いた直線と、実際にコンパスで進む方角が一致しないという問題がありました。地図の上ではまっすぐでも、実際には少しずつ角度がずれてしまうのです。
メルカトルは、この問題を解決するために、地図上で引いた1本の直線が、常に同じ角度(コンパスの方角)を表すように工夫した図法を編み出しました。これが後の世界地図の標準になっていきます。
大航海時代の航海術と、地図の切っても切れない関係
16世紀のヨーロッパでは、香辛料や貴金属を求めて、多くの国が遠い海の向こうを目指していました。いわゆる大航海時代です。
当時の船には、今のようなGPSはありません。頼れるのはコンパスと、星の位置と、そして地図だけでした。少しでも角度がずれると、目的地に着けないどころか、命に関わる遭難につながることもありました。
そんな時代に生まれたメルカトル図法は、まさに「命を守るための道具」として重宝されました。角度さえ正しければ、多少大きさの感覚がずれていても、航海には大きな支障がなかったのです。
つまりこの図法は、当時の技術と目的にぴったり合った、いわば「専用道具」だったといえます。ではその便利さの仕組みは、具体的にどうなっているのでしょうか。
