もしメルカトル図法が生まれていなかったら
少し想像を広げてみます。もしメルカトルが、この角度重視の図法を思いつかなかったとしたら、どうなっていたでしょうか。
当時の航海士たちは、コンパスの角度と地図の直線が一致しない不便な地図を、そのまま使い続けていたと考えられます。目的地までの航路を決めるのに、より多くの計算や経験、勘に頼る必要があったかもしれません。
大航海時代の航海は、ただでさえ危険と隣り合わせでした。地図と方角がずれてしまう分だけ、遭難や航路のミスが増えていた可能性は十分に考えられます。
もちろんこれはあくまで仮定の話です。しかし、この地図の発明が、当時の航海の安全性や効率にとって、それだけ大きな意味を持っていたことは想像に難くありません。
航海の歴史を支えた地図という道具
メルカトル図法が発表された1569年以降、この地図は少しずつヨーロッパ各国の航海の現場に広まっていったとされています。
航海の技術が発展し、より遠くの大陸との貿易や交流が活発になっていく中で、正確な角度で航路を示せる地図の存在は、貿易船や軍艦にとって欠かせないものになっていきました。
やがてこの図法は、単なる航海用の道具から一歩進んで、世界を見るときの「標準の形」として、学校の教材や新聞、書籍など、さまざまな場面に浸透していきます。
ここで1つの疑問が浮かびます。航海の道具として生まれたはずの地図が、なぜ航海とは関係のない教育の現場でまで、当たり前のように使われ続けることになったのでしょうか。
