それでも、この図法が使われ続けてきた理由
面積が正確ではないと分かっていても、メルカトル図法は今も世界中で幅広く使われています。それには、単純な理由があります。
1つは、陸地や海の「形」が比較的自然に保たれるため、パッと見たときに国や大陸の輪郭を認識しやすいという点です。慣れ親しんだ形は、それだけで多くの人にとって理解しやすい情報になります。
もう1つは、東西南北がまっすぐな直線で表現されるため、地図として見やすく、印刷物やデジタル画面にも扱いやすいという実用性です。
つまり「面積は不正確だけれど、他の面ではとても優秀な地図」というのが、メルカトル図法に対する、地図学の分野で広く言われている評価だと考えられます。
ほかの図法への切り替えが、簡単には進まない理由
面積を正確に表す地図があるなら、いっそのことすべて切り替えてしまえばいいのでは、と思う人もいるかもしれません。しかし、話はそれほど単純ではありません。
面積を正確にする図法は、その代わりに国や大陸の形が独特に歪んでしまうことが多く、慣れていない人にとってはかえって見づらく感じられることがあります。
また、長年メルカトル図法に慣れ親しんできた社会にとって、地図の形を一斉に変えることは、教材の作り直しや、人々の感覚のアップデートなど、決して小さくない手間とコストを伴います。ボストンの事例が全国的なニュースになったのも、それだけ珍しく大きな決断だったからだといえます。
実は、面積の正確さを目指した地図は、ガル・ピーターズ図法だけではありません。次のページで、他にどんな工夫をこらした地図があるのかを見ていきます。
