明治になってもパンは主役になれなかった
明治維新のあと、日本には西洋の文化がどっと押し寄せてきました。服装や建物、食べ物まで、次々と新しいものが取り入れられていった時代です。
パンもそのひとつとして紹介されましたが、すぐに人気が出たわけではありません。当時のパンはイースト菌を使って発酵させたもので、酸味が強く、生地も硬めだったといわれています。
お米が主食だった当時の日本人には、この味わいはなかなか受け入れがたいものでした。パン屋を開いても、お客さんが思うように集まらないという苦労があったようです。
それでも、あきらめずにパンと向き合い続けた人たちがいました。物語の中心となる、あるパン屋の親子です。
なぜ当時のパンは口に合わなかったの?
ここで、素朴な疑問を解決しておきましょう。なぜ当時のパンは、日本人の口に合わなかったのでしょうか。
理由のひとつは、発酵に使われていたイースト菌にあります。イースト菌は、パンをふくらませる働きをする微生物のことです。この菌で作った生地は、独特の酸っぱさが出やすいという性質がありました。
また、当時の製パン技術では、生地がどうしても硬く仕上がりがちだったともいわれています。ふんわりとした食感を出す工夫は、まだ十分ではなかったようです。
この課題に真正面から取り組んだのが、これから登場するパン職人の親子でした。彼らの挑戦を見ていきましょう。
