もし最後通告を受け入れていたら
ここで少し想像してみます。もしハーリドが最後通告をそのまま受け入れ、期限までに宮殿から退去していたら、どうなっていたでしょうか。おそらく戦闘は起こらず、イギリスは予定通り、別の人物を新しい王として即位させていたと考えられます。実際、この後最終的に王位に就くことになる人物は、あらかじめイギリス側が候補として想定していた人物でした。
もしハーリドが早い段階で身を引いていれば、歴史の教科書に「世界最短の戦争」という言葉が載ることもなかったかもしれません。もちろんこれはあくまで仮定の話であり、実際にどうなっていたかを確かめる方法はありません。ただ、ハーリドが強気な姿勢を崩さなかったことが、結果的に大きな悲劇につながったことは、多くの記録が一致して伝えている事実です。
兵力の数字だけでは測れない誤算がありました
ハーリド側が用意した戦力は、数の上では決して小さくありませんでした。宮殿を守る人数はおよそ2800人にのぼったとされています。しかし、ここには大きな誤解が潜んでいました。人数の多さと、実際の戦闘能力は必ずしも一致しないという点です。
ハーリド側の武器は、最新の大砲や機関銃ではなく、17世紀に作られたとされる古い青銅の大砲や、贈答品として受け取ったマキシム機関銃など、寄せ集めに近い装備でした。守り手の多くも、正規の兵士ではなく、宮殿の使用人や町の住民が中心だったとされています。一方のイギリス軍は、少人数ながら、最新の艦砲と訓練された海兵隊員で構成されていました。人数だけを見て「互角の戦い」と考えるのは誤りで、実際には装備と訓練の差が、勝敗をほぼ決定づけていたといえます。
