鏡は本当に左右を入れ替えているのか
鏡を見ると、右手を上げたはずなのに、鏡の中では左手が上がっているように見えます。多くの人は、これを「鏡が左右を入れ替えているから」だと思っています。
ところが、光の反射という仕組みだけを考えると、鏡には「左右だけを選んで入れ替える」という特別な働きはありません。鏡がしているのは、目の前にあるものの光を、そのまま真っすぐ跳ね返しているだけなのです。
この事実だけでも、少し意外に感じる方が多いかもしれません。鏡そのものには、右と左を区別する仕組みは備わっていないのです。
それなのに、なぜ私たちは毎日、鏡の前で「左右が逆になっている」と感じてしまうのでしょうか。この違和感の正体については、実は昔から多くの学者たちが頭を悩ませてきました。
実は紀元前から続く謎だった
「鏡はなぜ左右だけを逆にするのか」という疑問は、実は現代になって生まれたものではありません。古代ギリシャの哲学者プラトンの時代から、すでに議論されていたとされています。
それから2000年以上がたった今でも、この現象を完全に説明しきった定説は確立していないといわれています。物理学の分野で大きな賞を受けた研究者も、この議論に加わったことがあるほどです。
身近すぎて誰も疑わないような現象ほど、実はきちんと説明するのが難しいものです。鏡の左右反転も、まさにそうした現象のひとつだといえます。
次のページからは、この長年の謎に少しずつ近づいていきます。まずは、私たちが日常でよく感じる「素朴な疑問」から整理していきましょう。

