上下と左右、反転のしやすさを比べてみる
答えが分かったところで、あらためて上下と左右を比べてみましょう。上下は、頭と足という、はっきり違う目印があるため、私たちは鏡の中の姿を「向かい合う他人」として解釈しても、上下を逆に判断することはまずありません。
ところが左右は、体がほぼ対称な形をしているため、向かい合った相手の左右を判断するときと同じクセが、そのまま働いてしまいます。これが、上下は逆に感じないのに、左右だけが逆に感じられる理由です。
床を鏡にしたときに上下が逆に見えるのも、同じ理屈で説明できます。床に映った自分を「下から見上げてくる他人」として解釈すると、その場合は上下の判断にクセが働き、逆に感じられるようになるのです。
この比較からも分かるように、反転して見えるかどうかは、鏡の性質ではなく、私たちがどんな体の形を、どんな向きで見ているかによって変わってきます。次は、この「前後反転」を実際に利用している身近な例を紹介します。
鏡文字を利用したデザインの実例
先ほど紹介した救急車の文字も、まさにこの「鏡は前後を反転させる」という性質を逆手にとったデザインです。あらかじめ文字を反転させて書いておくことで、バックミラー越しに見たときに正しく読めるようにしているのです。
同じような工夫は、工事現場のトラックの表示や、一部のスポーツカーのロゴなど、後ろから見られることを意識したデザインにも見られることがあります。
こうした実例は、私たちが暮らす社会の中に、鏡の性質を理解したうえでの工夫が、意外とたくさん散りばめられていることを教えてくれます。
次は、この記事の答えの元になった研究について、その後の展開を紹介します。
