「鏡は左右を反転させる装置」という思い込み
多くの人が「鏡は左右を反転させる特別な道具だ」と思い込んでいます。学校の理科の授業でも、なんとなくそう説明された記憶がある方もいるかもしれません。
しかし、これまで見てきたように、鏡そのものには左右だけを選んで入れ替えるという特別な仕組みはありません。鏡がしているのは、光をそのまま跳ね返すという、いたってシンプルな作業だけです。
つまり「鏡=左右反転装置」というイメージは、実は思い込みに近いものだったのです。この勘違いは、鏡の前に立つ私たち自身の見方や比べ方によって生まれていると考えられています。
では、私たちはいったい何と何を比べて「左右が逆だ」と感じているのでしょうか。次の見出しで、実際に街で見かける身近な例から考えてみます。
救急車の文字が反対になっている理由
救急車の前面には「AMBULANCE」のような文字が、左右反転した状態で書かれていることがあります。これは、前を走る車のバックミラー越しに見たとき、正しく読めるようにするための工夫だといわれています。
この例から分かるのは、文字を鏡に映すと、確かに左右が入れ替わって見える、という点です。実際にバックミラー越しに見ると、反転された文字が正しい向きで読めるようになります。
一方で、鏡に映った人の姿については、事情が少し違います。人の姿の場合と、文字の場合とでは、反転が起きる理由がそもそも異なっている可能性があるのです。
この「人の姿」と「文字」の違いは、実はこのテーマ全体を理解するうえで、非常に重要なポイントになります。次のページでは、この違いをもう少し掘り下げてみましょう。
