「科学的に決められた距離」というのも、実は誤解です
42.195キロという数字を聞くと、「体力的に最適な距離として、科学的に計算されたのだろう」と考える方もいるかもしれません。しかし、これも実は誤解だとされています。
この距離は、選手の体力や科学的なデータをもとに算出されたものではありません。ある一つの大会で実際に走ったコースの長さが、そのまま後世まで受け継がれた結果にすぎない、というのが実際のところです。
スポーツのルールというと、緻密に設計されたものだと思われがちですが、マラソンの距離に関しては、むしろ現場での成り行きが大きく影響しています。この点は、意外と知られていないポイントです。
では、その「成り行き」を生んだ大会は、そもそもどんな事情で開かれることになったのでしょうか。
本当はローマで開催されるはずだった、1908年大会
42.195キロが生まれた1908年の大会は、実はロンドンで開かれる予定ではありませんでした。当初はイタリアのローマで開催される計画だったのです。
ところが1906年、イタリアにあるヴェスヴィオ山が噴火し、周辺に大きな被害をもたらしました。この影響でローマでの開催準備が難しくなり、急きょロンドンに開催地が変更されることになったといわれています。
近代オリンピックの歴史の中で、自然災害がきっかけで開催地が変更されたのは、これが初めての例だったとされています。急な変更にもかかわらず、ロンドンは短期間で準備を整え、大会を成功させました。
もしローマでそのまま開催されていたら、42.195キロという数字は生まれていなかったかもしれません。ここから、いよいよマラソンの距離をめぐる核心の出来事に迫っていきます。
