偽造防止・コスト削減は「おまけ」ではありません
識別のしやすさが主な理由だったとはいえ、偽造防止や金属の節約が軽視されていたわけではありません。特に戦後の物資が乏しかった時代には、金属を節約できることは社会全体にとって大きな意味を持っていました。
また、偽造されにくい硬貨を作ることは、お金の信頼を守るうえで欠かせない要素です。複数の理由が同時に満たされたからこそ、穴あきというデザインが長く採用され続けてきたとも言えます。ひとつの工夫でいくつもの課題を同時に解決できた点は、当時の知恵として評価できるのではないでしょうか。
資料や識者が語る「複合的な理由」
硬貨や貨幣制度に関する資料の多くも、5円玉や50円玉の穴について、識別・偽造防止・節約という複数の理由を並べて紹介しています。どれか一つだけが正解というよりも、いくつかの理由が重なり合って今の形になった、という説明のされ方が一般的なようです。
もし理由がひとつだけだったなら、他の硬貨にも同じように穴があけられていたかもしれません。複数の条件がそろって初めて、穴あきというデザインが選ばれたと考えると、5円玉と50円玉の特別さがより際立って感じられます。次のページでは、世界の有孔貨幣のその後についても触れていきます。
