Facebookを前面に出した「HTC First」
2013年、HTCとFacebook、AT&Tは「HTC First」を発売しました。Facebookが設計したスマートフォン向けの仕組み「Facebook Home」を最初から搭載した端末です。発表時の価格は2年契約で99.99ドルでした。友達の投稿をホーム画面に表示するという、SNSを中心にした体験が売りでした。
しかし、発売から1か月もたたない時期に、AT&Tは価格を99ドルから99セントへ引き下げました。報道では販売台数の低迷も伝えられ、発売後の展開は急速に厳しくなりました。Facebook Home自体も、公開から少しで100万ダウンロードに達したものの、当時のFacebookの利用者規模から見ると小さな数字でした。
HTC Firstの特徴は、端末そのものよりFacebook Homeという新しい画面体験を前面に出したことでした。ところがFacebookはすでに多くのスマートフォンで利用できます。つまり、Facebookをより目立たせることと、専用端末を新しく買うことの間には大きな差がありました。既存サービスの人気を新商品へ移すときには、この差が大きな壁になります。
99ドルから99セントになった理由
HTC Firstの考え方は一見すると分かりやすいものでした。毎日使うFacebookをスマートフォンの中心に置けば、端末そのものの魅力が高まるという発想です。実際、Facebook Homeは友達の写真や更新をホーム画面に大きく表示する仕組みでした。
ところが、スマートフォンを買う人は一つのサービスだけで端末を決めるとは限りません。すでに持っている端末へFacebookアプリを入れるだけでも同じサービスは使えました。さらにHomeの使い方を好まない人には、ホーム画面を大きく変えることが負担になります。人気サービスを「商品そのもの」に変える難しさが見える事例です。
価格が99セントまで下がったことは、消費者にとっては試しやすい条件でした。しかし、安さだけで短期間に注目を集めると、定価で買う価値があるかという本来の問いは見えにくくなります。HTC Firstは、人気のサービスを一つの端末に集めるだけでは、スマートフォン市場で独自の立場を作るのが難しいことを示した例でもあります。次はFacebookを中心に据えたHTC Firstです。人気サービスが付いているだけでは、なぜ専用端末を買う理由になりにくかったのでしょうか。
