Microsoft「Kin」
2010年、Microsoftは若者向けの携帯電話「Kin」を発売しました。SNSとの連携を前面に出し、写真やメッセージを手軽に共有することを狙った端末です。Microsoftは以前に携帯通信サービスの技術を持つDangerを買収しており、その技術や人材もKinの背景にありました。
しかし、Kinの販売は極端に短命でした。2010年6月30日、Microsoftは販売開始から48日でKinの展開を打ち切ると発表し、欧州で予定していた発売も中止しました。わずか7週間ほどで方針を変えたことになります。スマートフォン市場が急速に変化していた時期に、対象を若者に絞った新端末を出す難しさが表れた事例です。
Kinが短命だった背景には、携帯電話からスマートフォンへ市場の中心が移っていたこともあります。若者向けという明確な方向性はありましたが、同じ年代の人が一般的なスマートフォンでもSNSを使えるようになると、専用端末の必要性は弱くなります。市場が変化する時期は、企画した時点では正しく見えた狙いでも、発売時には古くなっていることがあります。
販売開始から48日で終了した携帯電話
Kinの失敗を考えるとき、販売期間の短さが目を引きます。Microsoftはその後、KinのチームをWindows Phone 7の開発へ組み込む方針を示しました。つまり、すべての技術を捨てたわけではなく、別の製品へ活用しようとしたのです。短期撤退は、投資をすべて無駄にする判断とは限りません。
また、Kinは若者向けという明確な対象を持っていましたが、その対象だけで大きな市場を作れるかは別問題でした。SNSが広がっていた時代だからこそ、専用端末ではなく普通のスマートフォンから利用する人も増えていました。「欲しい機能」と「専用端末を買うほどか」の差が、次のHTC Firstでも表れます。
販売開始から48日という期間だけを見ると極端ですが、企業にとっては早い段階で損切りする判断でもあります。さらにKinの開発チームがWindows Phone 7へ移されたことからも、そこで得た経験を別の製品へ回す考え方が見えます。失敗した商品を続けることより、次の製品へ人や技術を移すことを優先する場合もあるのです。続くのはMicrosoftのKinです。ここでは48日という極端に短い販売期間と、当時の携帯電話市場の変化が鍵になります。
