Quibi
2020年、米国で短編動画配信サービス「Quibi」が始まりました。映画やテレビ業界で知られる人物が立ち上げ、スマートフォンで短い作品を見る新しい形を打ち出しました。サービス開始前には巨額の資金を集め、報道によれば17億5000万ドルを調達していました。大規模な企画だったことは数字からも分かります。
しかしQuibiは2020年4月6日の開始から7か月足らずで終了を決め、12月1日にサービスを終えました。開始時期が新型コロナウイルスの感染拡大と重なったことも大きな環境変化でした。外出中にスマートフォンで短い作品を見る想定が、在宅時間の増加によって変わったことが影響したとの見方も報じられています。
Quibiの事例では、サービス開始の時期そのものが大きな意味を持ちます。感染拡大によって外出や通勤が減り、スマートフォンで短時間だけ動画を見る場面が変わりました。企画したときには強みだった利用場面が、開始時には弱くなることがあります。商品は良くても、使われる生活の場面が変われば結果も変わってしまうのです。
17億5000万ドルを集めても7か月足らずで終了
Quibiは、移動中などの短い時間に動画を見るという考え方を前面に出しました。一本の作品を長時間見るのではなく、区切られた時間に楽しめることが特徴でした。これはスマートフォンが生活に入り込んだ時代には相性のよい発想です。実際、開始直後にはアプリのダウンロードが伸びました。
ところが「いつでもどこでも見られる」という設計は、視聴環境が変わると強みが弱くなる場合があります。さらに無料動画や他の動画配信サービスが多い中で、料金を払ってQuibiだけを見る理由を作る必要もありました。市場の需要だけでなく、利用する場面そのものが変わったことが、サービスの寿命を短くした一因とされています。
17億5000万ドルという資金を集めていたことを考えると、Quibiは小さな実験ではありませんでした。それでも短期間で終了したことから、資金の大きさは利用者の定着を保証しないと分かります。動画サービスでは作品の内容だけでなく、無料で見られる動画との差や、毎月料金を払う理由まで説明する必要がありました。続くQuibiでは、巨額の資金と大きな期待がありながら、なぜ7か月足らずで終わったのかを、当時の生活環境と合わせて見ていきます。
