Amazon「Destinations」
Amazonは2015年、ホテルを予約できる旅行サービス「Amazon Destinations」を米国で始めました。自宅から車で行ける週末旅行先を探し、ホテルを予約できる仕組みで、開始時にはシアトル、ロサンゼルス、ニューヨーク周辺などが対象でした。ネット通販で巨大な顧客基盤を持つAmazonが、旅行分野へ進出する動きとして注目されました。
ところがサービスは長続きしませんでした。報道によると2015年4月に始まったサービスは、同年10月13日に終了しました。およそ半年です。Amazonが幅広い分野へ進出する企業だったからこそ、旅行サービスにも期待が集まりましたが、既存の旅行予約サービスがある市場で新しい利用習慣を作る難しさがありました。
Amazon Destinationsは、Amazonが持つ大きな利用者基盤を旅行分野へつなげる試みでした。しかし旅行では、商品を一つ選んで買うのとは違い、宿泊先だけでなく移動手段や日程も考える必要があります。通販で成功した仕組みを、そのまま別の市場へ持っていけば成功するとは限らないことがよく分かります。
半年ほどで終了したホテル予約サービス
Amazon Destinationsの例から分かるのは、ある分野で強い会社でも別の市場で自動的に成功するわけではないことです。ネット通販では「商品を探す→比較する→注文する」という利用習慣が定着しています。一方、旅行では宿泊場所だけでなく、交通、観光、日程、口コミなど複数の情報を見ながら決めます。
また、Destinationsは「遠くへ長期旅行」ではなく、「近場への週末旅行」に絞っていました。対象を絞ることは分かりやすさにつながりますが、市場そのものが小さくなることもあります。大企業の新サービスが短期間で終わるときは、会社の規模だけではなく、進出先の市場構造を見る必要があります。
また、週末の近場旅行に絞ったことは、使う場面を明確にする一方で、利用できる人や地域も限定します。開始地域を広げても、旅行そのものを考える人が常にいるとは限りません。サービスは「誰にでも使える」ことだけが強みではありませんが、対象を狭くしすぎると成長の余地も小さくなります。次に登場するAmazon Destinationsでは、通販で強かったAmazonが旅行市場へ入っても、半年ほどで終了した背景を探ります。
