Nokia「N-Gage」
2003年、携帯電話大手のNokiaは、携帯電話とゲーム機を一体化した「N-Gage」を発売しました。当時のNokiaは、携帯ゲーム市場で任天堂のゲームボーイシリーズに対抗することを明確に意識していました。発売時には世界規模の広告展開も行い、2004年末までに600万〜900万台を売る目標を掲げていました。
しかし実際の普及は目標に届きませんでした。後の報道では、Nokia側が3年間で200万台ほどだったことを認めたと伝えられています。改良版のN-Gage QDも発売されましたが、大きな流れを変えるまでには至りませんでした。電話とゲームを一つにする発想は新しくても、二つの用途を一台で満たす設計が必ずしも快適とは限らなかったのです。
N-Gageは、携帯電話とゲーム機を一台にまとめるという発想自体は非常に分かりやすいものでした。問題は、二つの製品を足した結果、一つの製品として使いやすくなったかです。電話としてもゲーム機としても妥協が必要なら、利用者は片方ずつ専用機を選ぶこともできます。新機能を足すだけで便利になるとは限りません。
600万台以上を目標にしたゲーム携帯の現実
初代N-Gageは、ゲームを交換する際に本体内部の電池を外す必要がありました。また、電話として使うときは本体を横向きに持つ独特の姿勢も話題になりました。さらに発売時のゲームには、他のゲーム機から移植された作品が多く、「N-Gageを買わなければ遊べない」という強い動機を作るのが難しかったと報じられています。
その後のQDでは一部の使いにくさが改善されましたが、最初に作られた印象を変えるのは容易ではありませんでした。N-Gageの事例は、二つの商品を一つにまとめれば便利になるとは限らず、それぞれの使い方を同時に満たす設計が必要だと教えてくれます。ここまでの事例を並べると、共通する理由がいくつも見えてきます。
N-Gageの目標と実際の販売台数には大きな差がありました。数字だけで失敗を語るのではなく、その差がどこで生まれたのかを見ることが大切です。使い勝手、ゲーム作品、携帯電話市場の変化などが重なり、一つの弱点だけでは説明できません。複数の小さな不満が積み重なることで、大きな差になる場合もあります。次ではN-Gageの設計上の特徴をさらに見ながら、販売目標と実績の差がどこから生まれたのかを確認します。
