Google「Wave」
2009年、Googleはリアルタイムで文章を共同編集できる「Google Wave」の開発者向けプレビューを発表しました。文字を入力する様子が相手側へその場で反映され、ファイルをドラッグして共有できるなど、当時としては新しい使い方を数多く盛り込んでいました。開発者から大きな反応があったこともGoogle自身が記録しています。
ところが2010年8月、GoogleはWaveの利用者数が期待したほど増えなかったとして、独立した製品としての開発を続けないと発表しました。サービスそのものはすぐには消えず、最終的に2012年4月30日に終了しました。つまり、技術が評価されても、一般の人が日常的に使う理由まで作れるとは限らなかったのです。
Waveは、専門知識のある人には面白くても、普通の人にはメールやチャットとの違いが分かりにくいサービスでした。新しい仕組みを作るほど、「今までの方法をやめてまで使う理由」を説明する必要があります。便利さを言葉で説明できても、実際の生活の中で使う場面を思い浮かべてもらえなければ、定着は難しくなります。
期待された新しい通信サービスが利用者を増やせなかった
Google Waveの難しさは、従来のメールやチャットと単純に同じものではなかったことです。Google自身も当時、Waveが既存のメールやブラウザーの改良版ではなく、新しいカテゴリーに近いことを説明していました。新しいものは自由度が高い半面、「結局何に使うのか」を説明するのが難しくなります。
一方で、Waveの技術がすべて消えたわけではありません。リアルタイム編集や共同作業の考え方は、その後のGoogleのサービスやオープンソースの取り組みに生かされました。商品が終了しても、そこから生まれた技術や発想が別の形で残ることがあります。次は、メッセージアプリでも似た問題が起きました。
その一方で、Waveで試されたリアルタイム共同編集の考え方は、その後の技術にもつながりました。サービスを止める決定と、技術を捨てる決定は同じではありません。利用者が増えなかった製品からでも、別の製品に役立つ仕組みが残ることがあります。この点は、失敗を結果だけで判断しないために重要です。続いてGoogle Waveを見ます。新しい共同作業の仕組みが注目されたのに、なぜ利用者を増やし続けられなかったのでしょうか。
