60年間、片手だけ指を鳴らし続けた医師の話
アメリカにドナルド・アンガーという医師がいます。彼は子どもの頃、母親から「指を鳴らすと関節炎になる」と何度も注意されていたそうです。
その言葉に納得できなかったアンガー氏は、自分の体を使ってこの言い伝えを確かめることにしました。左手の指だけを毎日、少なくとも1日2回鳴らし続けたのです。
この実験は、なんと60年以上も続けられました。単純計算でも、左手の指は3万6千回以上は鳴らされたことになります。一方の右手はまったく鳴らさず、比べるための対象として保たれました。
これほど長い期間、片方の手だけを鳴らし続けたのには、もちろん理由があります。次の見出しで、その意図を詳しく見ていきましょう。
なぜ彼は、片方の手だけ鳴らし続けたのか
アンガー氏が左手だけを鳴らし続けたのは、右手を「鳴らさない場合の比較対象」として使うためでした。同じ人の体で、条件だけを変えて結果を比べようとしたのです。
もし指を鳴らすことが本当に関節炎の原因になるなら、鳴らし続けた左手だけに変化が現れるはずです。逆に何も変化がなければ、母親の言い伝えは根拠が薄いということになります。
50年ほど経った時点で、アンガー氏は自分の左右の手を詳しく調べました。その結果を、医学雑誌に発表しています。
この長期にわたる自己実験は、後にある賞を受賞することになります。次のページで、その結末を紹介します。
