ここでいう「不思議な形」とは?
今回の基準は、建物の外観を見たときに、別の具体的なものを連想しやすいことです。たとえばカニの姿に見える建物、巻き貝のように見える施設、雲を思わせる屋根、巨大なプリンを思わせる店舗などが当てはまります。一方で、ただ複雑なだけの建築や、珍しい色を使っただけの建物は、原則として外しています。
また、建物そのものではなく、巨大な像や看板だけが目立つ場所も慎重に扱います。外壁に取り付けたオブジェが主役なのか、建物の形自体が特徴なのかは、似ているようで違うからです。今回は「建築物としての形」に注目し、公式案内や設計者の説明などで形の意図や特徴を確認できるものを中心に選びました。
ここで重視したのは、写真を見た人がある程度共通して連想できるかどうかです。見る人によって解釈が大きく違う抽象作品は、建築として面白くても今回の中心からは外しました。
そのため、選ぶ際には外観写真だけで判断せず、施設の公式案内や設計者の説明も確認しました。見た目の印象と、実際の設計意図が一致しないこともあるためです。
「見立て」は昔から日本にある発想
「見立て」という言葉は、本来あるものを別のものになぞらえて見る発想を指します。日本の文化では、庭の石を山に見立てたり、限られた空間で自然の景色を表したりする考え方が昔から見られます。建物そのものについても、自然や土地の記憶を形に重ねる発想は珍しくありません。
ただし、「見立て建築」という言葉が今回紹介するすべての建物に共通する正式な分類名というわけではありません。この記事では、分かりやすく整理するために、動物や食べ物、自然物などを思わせる建物をまとめてそう呼びます。ここから先は、似た形でも理由がまったく違うことが分かってきます。
「見立て」という考え方は、形をそのまま再現することだけではありません。あるものの特徴を借りて、別の場所や用途に意味を重ねる方法も含まれます。この違いを知ると、後に出てくる自然モチーフの建物が見やすくなります。
昔の「見立て」は庭園や工芸品にも多く見られました。建物でも、ある物の特徴を別の場所に持ち込むことで、限られた敷地の中に豊かなイメージを生み出せます。
