同じ「曲線」でも意味はそれぞれ違う
不思議な建物を見ていると、丸みや曲線が多いことに気づきます。けれども、曲線には一つの意味しかありません。ほうとう不動の大きな曲面は雲のような景観をつくり、豊島美術館の曲面は自然光や空気を感じる空間につながっています。海のギャラリーの折れ曲がった屋根は、貝と光を結びつける役割を持ちます。
一方、プリンの森の丸みは食べ物の姿を伝えるために分かりやすく使われています。形が似ていても、背景にある目的は全く違います。丸いから柔らかい、角ばっているから近代的、と単純に決めつけるのではなく、その建物がどんな場所で、何のために作られたのかを見ることがポイントです。
曲線は視線をやわらかく動かす一方、直線は方向や重さを強く感じさせます。建築家はこうした見え方の違いを使い分けています。似た外観を探すときも、曲線の量だけでなく、視線がどこへ導かれるかを見ると面白いでしょう。
同じ曲線でも、曲率や方向、面のつなぎ方が変わると印象は大きく変化します。建築を眺めるときは「丸いかどうか」だけでなく、どこからどこへ曲がっているかにも注目です。
直線的な建物にも「見立て」はある
不思議な形というと、曲線の多い建物を思い浮かべがちです。しかし、軍艦マンションや石ノ森萬画館のように、直線や角を強調することで別のものを連想させる建物もあります。特に乗り物をイメージした場合、丸みよりも機械的な線や突出した部分が印象をつくることがあります。
東京ビッグサイトの会議棟も、複雑な曲面ではなく、巨大な三角形と逆ピラミッドのような構成が個性につながっています。つまり、ユニークな形を生む方法は「曲げる」だけではありません。伸ばす、傾ける、浮かせる、積み重ねる。こうした基本的な操作でも、建物は見慣れない姿へ変わります。
「見立て」は日本だけの専売特許ではありません。海外にも動物や船、貝などを思わせる建築があります。ただし、作品が生まれた土地の文化や用途によって、形に込める意味は変わります。日本の例だけを見ても十分に多様です。
日本の例では、自然の形をそのまま写すより、特徴を取り出して建築へ置き換える方法が多く見られます。海外の同種の建物と比べると、その違いも見えてきます。
