二枚貝が開いたような「海のギャラリー」
高知県土佐清水市にある「海のギャラリー」は、貝類を展示する施設です。土佐清水市や公式サイトの紹介によると、建物は建築家の林雅子さんが設計し、1966年に完成しました。特徴は鉄筋コンクリートの屋根で、二枚貝がぱっと開いたような形に見えます。展示内容と建築の外観が自然につながっているところが大きな魅力です。
この形は見た目のためだけではありません。公式サイトには、薄暗い海の中で上から差し込む光を受けた貝の美しさを建築に取り込みたいという林さんの言葉が紹介されています。屋根中央の明かり取りによって、内部にも独特の光が入ります。建物そのものが、展示される貝を引き立てる装置になっているわけです。
海のギャラリーは、建物自体が展示内容の延長線上にあります。数万点に及ぶ貝殻を収蔵する場所だからこそ、二枚貝を思わせる屋根が単なる装飾ではなく、施設の性格を伝える要素になっています。
海のギャラリーは1967年に開館し、その後も展示施設として使われてきました。半世紀を超えて使われることで、建物の形そのものが地域の歴史になっています。
土を掘ったように見える「モザイクタイルミュージアム」
岐阜県多治見市のモザイクタイルミュージアムは、山の中に土を掘ってつくったような外観が特徴です。公式サイトでは、タイルの原料を掘り出す「採土場」を思わせる外観と説明されています。すり鉢状の芝生の斜面から土色の壁が立ち上がるため、遠目には建物というより大きな土の塊に見えます。
面白いのは、地域産業と形が直結していることです。多治見市笠原町はモザイクタイルの産地で、タイルは土を焼いてつくられます。藤森照信さんは、建築を構成する最も根源的な素材として「土」に注目したと公式サイトで説明されています。形を先に奇抜にするのではなく、地域の仕事をたどった結果として姿が決まった建物です。
土の山を思わせる外観でも、内部には三つの展示室があり、タイルの歴史や製品が段階的に見られる構成です。外観の印象と、落ち着いて資料を眺める館内の差も面白いところです。
ミュージアムの外観には、タイルそのものを直接貼り付けるだけでなく、土の採掘場を思わせる地形的な表現が使われています。地域の産業を一段抽象化したデザインです。
