建物の形は「使いやすさ」と無関係ではない
奇妙な形を見ると、「こんな建物で本当に使いやすいの?」と気になります。ところが、今回の例では、形がそのまま内部の使い方に関係しているものがあります。海のピラミッドのらせん状スロープ、豊島美術館の大きな屋根と開口部、きのこハウスの上へ広がる空間などです。外形を変えると、内部の移動や光の入り方まで変わります。
逆に、外からは奇抜に見えても、中では意外なほど普通に使える建物もあります。軍艦マンションは住宅として始まり、斜めの家も実際の住まいとしてつくられました。見た目だけから「住みにくい」「使いにくい」と判断するのは早計です。面白い外観の裏には、敷地条件や光、動線など、目に見えない設計上の工夫が隠れています。
建築の形には、光を入れる、雨を流す、人を動かす、構造を支えるといった役割があります。そのため、珍しい形でも「見た目だけの工夫」とは限りません。形と機能が重なるほど、建築としての説得力が増します。
たとえば屋根の形を変えると、雨水の流れや室内の天井高も変わります。奇抜に見える部分が、実際には環境への対応や空間づくりと一体になっている場合があります。
形を決めるのは敷地の条件でもある
建物が変わった形になる理由は、デザイナーの遊び心だけではありません。土地の形が細長かったり、道路や川に沿っていたり、周囲の景色を守る必要があったりすると、普通の箱形が最適とは限りません。東京のような都市部では、限られた土地を立体的に使うことで、特徴的な外観になることもあります。
豊島美術館のように自然景観との関係を重視した建物もあれば、ほうとう不動のように富士山と一体になった景色を意識したものもあります。つまり、形だけを切り取って見るより、「なぜこの場所にこの形なのか」と考えたほうが建物の意図をつかみやすいのです。次は、こうした形が地域の記憶とどう結びつくのかを見てみましょう。
土地が広ければ自由に形を決められるとは限りません。周囲の道路、既存の木、海や山への眺めなど、敷地には多くの条件があります。その条件を受け止めた結果が、外から見ると不思議な形になる場合があります。
敷地に木が残っていたり、道路からの視線が決まっていたりすると、建物の形は自然に制約されます。その制約を隠さず、むしろ外観の特徴へ変える設計もあります。
