③コ・イ・ヌールは「男性が持つと不幸」と語られた
コ・イ・ヌールは、現在イギリス王室の王冠に組み込まれていることで知られる大きなダイヤモンドです。長い歴史を持ちますが、初期の来歴には不明な部分も多く、後世の伝説と史実が混ざっています。19世紀にはイギリス側へ渡り、王冠の宝石として扱われるようになりました。
このダイヤモンドには「男性が持つと不幸になる」という話があります。もともと別の形で語られていた不吉な伝承が、19世紀の新聞などを通じて広がり、やがて「女性が所有すれば災いを避けられる」という話まで加わりました。ただし、これを裏付ける科学的な証拠があるわけではありません。重要なのは、宝石の持ち主に戦争や失脚などが多かったため、その歴史が呪いの物語と結びつきやすかったことです。
「男性には不幸、女性なら安全」という話は、石そのものの性質ではなく、人間の歴史をもとに作られた伝承です。王位争いでは男性の支配者が前面に出るため、結果的に不運な人物の記録が集まりやすかったともいえます。
呪いの話の裏側に「奪われた宝石」の歴史がある
コ・イ・ヌールがホープ・ダイヤモンドと違うのは、ただの不運な持ち主の話では終わらない点です。コ・イ・ヌールはインド亜大陸の権力争いの中で持ち主を変え、最終的にイギリスへ渡りました。スミソニアンは、その歴史をたどると征服や略奪、植民地支配の問題が見えてくると紹介しています。
そのため、「呪い」という言葉は単なる怪談としてではなく、強い者が貴重品を奪い、それを所有することへの恐れや反発を表す物語として読むこともできます。もちろん、これは呪いが存在する証明ではありません。むしろ、なぜある宝石に不吉な意味が与えられたのかを考える手がかりです。次は、宝石ではなく、一人の俳優が愛したスポーツカーにまつわる噂です。
宝石の所有者が変わるたびに権力関係まで変化したため、石の来歴を追うことは、その時代の政治史を追うことにもつながります。ここが単なる怪談とは違うところです。
このように、呪いの話は宝石そのものの特徴より、その石をめぐる人間関係や政治的な出来事を映すことがあります。コ・イ・ヌールの歴史は、その典型といえるでしょう。
