⑪メキシコの「人形島」は、50年以上の収集で異様な風景になった
メキシコシティ南部のソチミルコには、「人形島」と呼ばれる小さな土地があります。木々に大量の古い人形が吊るされ、首が外れたり、顔が色あせたりした人形が並ぶ光景で知られています。この場所を作り上げたのは、ドン・フリアン・サンタナ・バレラという男性でした。彼は1950年代ごろから島で暮らし、人形を集めて木に掛けるようになったと伝えられています。
島の由来には、若い少女が水路で溺れ、その後に人形が流れてきたという話があります。サンタナは少女の魂を鎮めるため、人形を供えたといわれています。ただし、少女の死亡を裏付ける公的な記録は確認されていません。確実なのは、人形を集めて吊るす行為が長年続き、現在の異様な景観が実際に作られたことです。
人形そのものも長い年月に雨風を受けて傷んでいるため、目が取れたり顔が変色したりしています。その姿が「人形が生きている」という想像を刺激しやすいのでしょう。環境による変化が、物語の怖さをさらに強めています。
大量の人形は「呪い」より人間の記憶を映している?
人形島では、同じ種類の人形が整然と並んでいるのではありません。壊れた人形、古い人形、誰かが持ち込んだ人形などが混ざり合い、時間とともに数が増えました。そのため、単体では普通の玩具でも、何百体、何千体と集まることで強い不気味さが生まれます。
しかも、この島を訪れる人が人形を置いていくようになったことで、場所の物語が現在進行形で続きました。つまり「呪われた島だから人形が集まった」というより、人形を集める習慣が島を呪われたように見せ、そのイメージがさらに人形を呼び込んだ面があります。次は、幽霊だけでなくUFOまで語られるルーマニアの森です。
また、サンタナが集めた人形に、訪問者が新しい人形を加えるようになりました。結果として、島は個人の行動から始まった風景が、観光と口コミによって共同で作られる場所へ変わっていきました。
人形島の景観は、自然にできたものではなく、一人の人間が何十年も人形を集め続けた結果です。その事実だけでも十分に珍しく、怪談とは別の意味で世界的に注目される理由になります。
