1人目は「空から落ちてきたもの」に命を奪われた?
古代ギリシャの劇作家アイスキュロスは、紀元前5世紀に活躍した人物です。『アガメムノン』などで知られ、現在の演劇につながる重要な劇作家の一人とされています。ところが、その死については、作品ほど有名ではない奇妙な逸話が残っています。シチリア島のゲラに滞在していたとき、頭に落ちてきたものが命取りになったという話です。
その「落ちてきたもの」は、なんとカメのような甲羅を持つ生き物でした。古代の記述では、ワシがカメを空から落として甲羅を割ろうとし、その下にあったアイスキュロスの頭を岩と間違えたと説明されています。あまりにも出来すぎた話なので、本当に起きた事故なのか、後世に作られた伝説なのかが問題になります。
現代なら、鳥が空からカメを落とす場面自体が珍しいでしょう。しかも、それが人の頭に当たるとなれば、偶然が何重にも重なります。この出来事が本当なら、まさに「ありそうで、ほとんどありえない事故」です。ただし、ここで一度立ち止まる必要があります。
ワシとカメの話はどこまで本当なのか
アイスキュロスの死について同じ内容を伝える古代の資料があり、この話がかなり早い時期から知られていたことは確かです。ただし、古い資料に記されているからといって、そのまま事実だったと断定できるわけではありません。古代の伝記には、偉人の人生を印象的に見せるための逸話や、予言と結びつけた物語が加えられることがありました。
さらに、アイスキュロスには「落ちてくる物によって死ぬ」という予言があったため、その予言を実現する形で物語が整えられたとも考えられています。つまり、実際の事故が伝承の土台になった可能性と、最初から伝説として作られた可能性の両方があります。確実なのは、彼が紀元前456年か455年ごろ、シチリア島のゲラで亡くなったことです。死因の細部は、慎重に見る必要があります。
古代の物語では、偉人の最期に「予言が現実になった」という要素が添えられることがあります。予言と事故がぴたりと重なると、偶然よりも運命の話として受け入れられやすくなります。アイスキュロスの例も、まさにその典型として読むことができます。
