5人目は「猿にかまれた傷」から亡くなった国王
1920年、ギリシャ国王アレクサンドロスは、27歳という若さで亡くなりました。国王が戦場で暗殺されたわけでも、重い病気を長く患っていたわけでもありません。王宮の敷地内で犬と猿が争っているところに出くわし、仲裁しようとしたことがきっかけでした。
アレクサンドロスは犬を助けようとして猿を追い払おうとし、その際に複数の深いかみ傷を負いました。傷はその場で手当てされましたが、時間がたつにつれて感染が進み、高熱が出ました。その後、感染が全身に広がる状態になり、10月25日に亡くなっています。動物との小さなトラブルが、一国の王の人生を突然終わらせたのです。
事故が起きたのは1920年10月2日でした。アレクサンドロスは王宮の敷地を歩いていたところ、犬と猿の争いに介入しました。相手が人間ではなく動物だったこと、しかも自分から止めに入ったことが、この最期を特に意外なものにしています。王の身近な場所で起きた出来事だったこともポイントです。
なぜ猿にかまれただけで命を落としたのか
現代から見ると「猿にかまれたくらいで」と感じるかもしれません。しかし、深い動物咬傷は感染の危険があります。とくに20世紀初頭は、抗菌薬が現在のように使える時代ではありませんでした。アレクサンドロスの傷も、その後に感染が悪化し、血液中にまで影響が及ぶ状態になったとされています。
さらに、医師たちは足を切断する案も検討したものの、実際には決断できませんでした。手術そのものにも大きな危険があったからです。現在のような集中治療や抗菌薬がなかった時代には、感染症は非常に深刻な問題でした。だからこそ、事故の発端が猿との争いだったという意外性ばかりに目を向けず、その後の感染が致命的だったことを押さえておく必要があります。
ここでいう「かまれただけ」という表現には注意が必要です。深い咬傷は、口の中などにいる細菌が傷へ入りやすく、感染のきっかけになります。さらに傷が複数あれば、体への負担も大きくなります。当時は抗菌薬による治療がなく、現在なら救える可能性のある感染でも、急速に悪化することがありました。
