なぜ「財物である」ではなく「財物とみなす」なのか
刑法245条の文言をよく見ると、「電気は財物である」ではなく、「財物とみなす」と書かれています。この言い回しには、ちゃんとした意味があります。
法律で「みなす」という言葉を使うのは、本来は違うものを、ある場面に限って同じものとして扱うときです。電気は本来、形のある”物”ではないけれど、窃盗の罪を考えるときは財物と同じように扱う、という意味になります。
この規定は窃盗の章に置かれていますが、刑法251条によって、詐欺や恐喝の罪にも準用されています。たとえば、人をだまして電気を使わせた場合なども、同じ考え方で扱われることになります。
明治の裁判官たちが悩んだ「電気は物なのか」という問いに、法律は”物ではないが、物として扱う”という形で答えを出したのです。
Q. 電気を「横領」した場合も、同じように罪になる?
A. ここは少し意外なポイントです。横領の罪を定めた章では、刑法255条で別の規定が準用されていますが、電気を財物とみなす245条は準用の対象に含まれていません。
そのため、一般には、電気は横領罪の対象には含まれないと考えられています。窃盗や詐欺では”財物扱い”される電気も、横領の場面ではそうはならないというわけです。
同じ”電気”でも、どの罪が問題になるかによって、扱いが変わることがある。法律の世界ならではの細かな違いです。
とはいえ、日常生活で問題になりやすいのは、やはりお店や施設のコンセントでの”無断充電”です。では、どんな場合なら充電してもよく、どんな場合が問題になるのでしょうか。
