巨額でも成功が約束されるわけではありません
国家や大企業が手がける大型プロジェクトには、私たちの想像を超えるお金が動くものがあります。ところが、予算が大きければ大きいほど成功しやすいとは限りません。技術が追いつかなかったり、途中で必要性が変わったりすると、完成前に計画そのものが消えることがあります。しかも中止された時点で、すでに巨額の費用が支払われている場合もあります。
ここで注意したいのは、「大失敗」という言葉だけでは、事情の違う事例が一緒になってしまうことです。今回は、完成しなかったもの、商業運転や本格運用に入れなかったもの、当初の目的を達成できないまま大幅に縮小されたものを中心に選びました。単なる赤字事業ではなく、巨大な計画が途中で行き先を失った例に絞っています。
特に大型事業では、途中で前提条件が変わることがあります。始めた時点では必要だった設備が、数年後には別の技術で置き換えられることもあります。規模の大きさは、こうした変化への対応を難しくします。
「使ったお金」と「最後まで必要なお金」は違います
大型計画の記事でよく登場する「○億ドル」「○十億ドル」という数字には、いくつかの種類があります。すでに使った実額なのか、完成までに必要と見積もった金額なのか、将来の運営費まで含む総額なのかで、意味がまったく違います。たとえば米国の超伝導超大型加速器では、1989年に完成費用を59億ドルと見積もった一方、1993年には110億〜130億ドル程度まで膨らんでいました。
そのため本記事では、「実際にいくら使われたか」と「完成していたらどれほどかかったか」をできるだけ分けて紹介します。数字の基準が違う場合は、その違いも説明します。こうして見ると、失敗の大きさは単に最終金額を見るだけではなく、最初の見積もりから何が変わったかを見ることで、よりはっきりしてきます。
さらに、当初予算と最終的な支出を比べるときは、物価や為替の変化にも注意が必要です。同じ金額でも年代が違えば価値は変わるため、古い事例ほど単純な円換算だけで規模を比べないほうが安全です。
