「完成したのに使えない」という結末を迎えました
ショアハムの最大の問題は、施設が完成しても営業を始められなかったことです。1979年のスリーマイル島事故、1986年のチェルノブイリ事故を経て、原発への不安は強まりました。ニューヨーク州の監査資料によると、1980年代には住民の反対が大きくなり、安全上の理由から避難計画を巡る対立も続きました。
最終的に1989年、運営会社は発電所を商業運転しないことで州側と合意しました。発電所は1992年にロングアイランド電力公社へ名目上1ドルで移され、その後廃止措置が進められました。つまり「発電所を造る」という工事自体はかなり進んでいたのに、「電力を売る」という本来の目的には到達しなかったのです。
この事例は、大型施設では建物が完成しただけでは成功にならないことを示しています。法律や安全基準、地元の合意、運用体制まで整って初めて、設備は社会で使えるものになります。工事費だけを見て計画の成功を判断できない理由が、ここにはっきり表れています。
莫大な建設費を「運転開始」まで回収できませんでした
ショアハムを初期見積もりと比べると、規模の変化はさらに印象的です。州の監査資料では、1967年に540メガワット級として計画された際の費用は1億2400万ドルでした。1969年には820メガワットへ拡大し、見積もりは2億1700万ドルに変更されました。ところが最終的な建設費は約56億ドルに達しています。
この数字だけを単純に割り算すると約45倍になります。ただし、途中の設計変更や物価、資金調達、追加の安全対策など条件が変わっているため、「同じものが45倍になった」と単純化するのは適切ではありません。それでも、初期の想定と実際の負担の差が非常に大きかったことは確かです。
しかも営業を始めないため、完成後に電力を販売して投資を回収する道もありませんでした。大規模施設は、造ることよりも「造った後に使い続ける」ことまで含めて計画する必要があります。次に見る軍事システムでは、今度は技術だけでなく、必要とされる戦い方そのものが変わっていきます。
