ショアハムでは「電力需要」だけでは判断できませんでした
ショアハム計画が始まった1960年代には、ロングアイランドの電力需要が増えるという見通しがあり、発電所の増設には合理的な理由がありました。しかし、原発を造るには発電量だけでなく、安全設備、燃料管理、緊急時の対応、地域住民への説明など多くの条件を満たす必要があります。需要予測だけでは、事業が成立するとは限りません。
ニューヨーク州の監査資料では、建設費の増加に加えて、避難計画をめぐる問題が運転開始の大きな障害になったことが記録されています。建物が完成していても、周辺地域が緊急時の対応に納得できなければ、発電所としての運転はできません。大型施設では「造れるか」と「使えるか」を別々に確認する必要があります。
発電所は地域の電力網にもつながるため、設備の建設だけでなく送電や運用の準備も必要です。需要があるから造るという単純な計算では、最後まで成立するかを判断できません。
ショアハムのような発電所では、発電した電力を長期間売ることまでが計画の一部です。建設費が増え、運転開始が遅れれば、予定していた収入も先送りになります。設備を造るための費用と、運転開始後に得る収入を同じ時間軸で見る必要がありました。
使われなかった設備の費用は地域にも残りました
ショアハムでは、商業運転に入らないまま廃止が決まりました。ニューヨーク州の監査資料は、建設にかかった約56億ドルの負担がロングアイランドの電力利用者に長く影響したことを記録しています。発電による収入がないため、建設費を回収する通常の道筋も失われました。
この事例は、公共性の高い大型施設ほど、失敗した場合の負担が利用者や納税者に広がりやすいことを示します。企業だけの問題ではなく、地域全体の料金や財政に影響するためです。設備の完成をゴールにせず、完成後に本当に使える条件がそろっているかを早い段階から確かめることが重要になります。
後から施設を別用途に使えるかどうかも重要ですが、原発設備は用途を簡単に変えられません。結果として、発電所としての収入を生まないまま廃止に向けた費用が発生しました。
発電所が動かなければ、利用者に電気を届けるという本来の役割も果たせません。それでも建設に使った借入金や関連費用は残ります。公共性の高い設備では、利用できなかった場合に誰が負担するのかまでを含めて計画を考えることが重要です。
