巨額プロジェクトで特に怖いのは「途中で戻れなくなる」ことです
大型計画では、時間が経つほど「ここまでお金を使ったのだから、今さら止められない」という感覚が強くなりがちです。ところが、すでに支払った費用は、計画を続けても戻ってきません。だから本来は、これまで使った金額ではなく、これから追加で必要な費用と得られる効果を比べて判断する必要があります。
SSCでは、すでに約15.7億ドルを使っていた一方、完成費用の見積もりは110億〜130億ドルへ膨らみました。FCSも約180億ドルを投じた段階で、なお計画の実現性に不確実さが残っていました。X-33もNASAがほぼ10億ドルを投じたあとで終了しています。「ここまで使ったから続ける」という考え方だけでは、さらに大きな負担を生むことがあります。
この状態では、追加の支出を止めるだけでも大きな決断になります。すでに使った費用を惜しむ気持ちは自然ですが、経済学では過去に回収できない支出と、これから必要な支出を分けて考えることが重要とされます。
大きな計画ほど「途中で見直せる設計」が大切です
6件を通して見えてくるのは、巨大な計画ほど最初の計画書だけで最後まで進めるのが難しいということです。技術が進めば条件が変わり、社会の価値観も変わり、戦争や景気、規制の変更も起こります。だからこそ、途中で小さな試験を重ね、費用と成果を確認しながら進める方法が重要になります。
「巨額の費用をかけたのに大失敗」という言葉は強い印象を与えますが、その中身を見ると、単純な無駄遣いだけではありません。未来を先取りしようとして失敗した計画もあれば、社会や制度の変化に対応できなかった計画もあります。大きな夢ほど、夢の大きさだけでなく、途中で現実に合わせて形を変える仕組みが必要なのです。
見直しの節目を最初から決めておけば、「中止するかどうか」を感情だけで判断しにくくなります。技術、費用、利用見込みなどを定期的に確認し、条件を満たさなければ縮小する仕組みが、巨大計画では特に重要です。
見直しには、技術試験の結果だけでなく、需要予測や運用費の確認も含まれます。たとえば施設が完成しても利用者が少なければ、投資の意味は変わります。完成時点ではなく、その後何年使えるかまで見通すことが重要です。
