戦場の変化が「必要な装備」を変えました
FCSの難しさは、開発している間にも軍が直面する課題が変わったことでした。計画は軽量で機動性の高い部隊を想定していましたが、イラクやアフガニスタンでの戦闘を経て、道路脇の爆発物や近距離での戦闘など、別の課題が強く意識されるようになりました。
2009年、米国防長官はFCSの車両計画について、当時の戦闘から得られた教訓を十分に反映していないと判断しました。これにより車両部分が取りやめとなり、その後、FCS全体も終了する方向へ進みました。これは「技術がまったく作れなかった」だけではなく、「完成しても今の戦場に合わないかもしれない」という問題でした。
計画を始めた2003年と、見直しが行われた2009年では、軍が優先する能力にも差が生まれていました。長期間かかる装備開発では、完成するころの利用環境まで想像する必要があります。
装備開発は、構想から実戦配備まで10年以上かかることがあります。その間に相手の戦い方や任務が変われば、完成した装備が当初ほど必要とされなくなる可能性があります。長い開発期間そのものが大きなリスクになります。
すべてが消えたわけではなく一部は次の計画へ移りました
FCSの終了後、研究していた技術や装備の一部が別の近代化計画へ引き継がれました。米会計検査院も、FCSの残された要素について、現在の部隊に技術を移す取り組みが続いたことを記録しています。つまり、計画全体は中止されても、個々の技術まで一斉に捨てられたわけではありません。
この事例から分かるのは、「計画の失敗」と「個々の成果の消失」は別だということです。巨大な計画では、全部を一気に成功させるのが難しいため、途中で得た成果を切り出して別用途に回せるかどうかが重要になります。次は、軍事とは正反対に見える医療分野で、全国の病院を一つのIT計画で変えようとした例です。
このような引き継ぎは、途中まで開発した技術を別の目的で使う方法です。一方、元の計画に合わせて作られた設備や契約は、そのまま再利用できないこともあり、成果の移管にも追加の費用や時間がかかります。
FCS後に残った技術の一部は、別の計画として組み直されました。このような「切り出し」は、巨大計画を一括で評価せず、価値のある部分を残す考え方です。反対に、互いに依存していた機能は単独では価値を出せないこともあります。
