巨大加速器には「研究以外の費用」も必要でした
SSCの予算を考えるとき、加速器本体だけを想像すると実際の規模を見誤ります。地下トンネル、電力設備、研究施設、検出器、管理施設など、粒子を衝突させるための周辺設備も必要でした。完成後は施設を長期間運営する人員や電力も必要です。つまり、研究成果を得るためには「装置を買うお金」以外にも多くの費用が発生します。
米エネルギー省の資料では、SSCは約87キロメートルのトンネルに約1万2000個の超伝導磁石を並べる計画でした。これほど複雑な設備では、一部の遅れが全体の予定に波及しやすくなります。大型計画の費用が膨らむときは、一つの商品が高くなったのではなく、関係する作業が連鎖して増えている場合があります。
巨大施設では、電力や冷却など日常的な運転に必要な設備も欠かせません。研究成果を得るためには、装置の本体だけでなく、それを長期間安定して動かす仕組みまで必要でした。
こうした周辺設備は、研究装置そのものより目立たないため、外からは予算の大きさが分かりにくい部分です。ところが、どれか一つが遅れれば全体の完成時期も動きます。大型研究施設では、本体と周辺設備を別々ではなく、一つの事業として管理する必要があります。
中止後の跡地は「無かったこと」にはなりません
SSCの計画が止まったあとも、建設途中のトンネルや施設は残りました。長い時間をかけて掘った地下空間は、別の目的に転用できる部分もありましたが、当初想定していた巨大加速器として使うことはできませんでした。途中まで造った設備を別用途へ変えるには、それ自体にも費用が必要です。
この点は、完成前に中止される大型事業が抱える特徴です。完成品なら売却や運用で価値を取り戻せる可能性がありますが、建設途中の設備は用途が限られます。だからこそ、大きな投資ほど「途中で止めた場合に何が残るか」まで最初に考えておくことが重要になります。
地下構造物を撤去するだけでも費用がかかります。残した場合も安全管理や維持が必要になるため、「中止した瞬間に支出がゼロになる」とは限りません。計画終了後の処理費用まで含めて考える必要があります。
さらに、工事途中の施設を残す場合には、土地の管理や設備の安全確認が必要になります。新しい用途へ転用できれば価値を生み出せますが、特殊な設備ほど転用先が限られます。中止の判断では、残った資産の扱いまで含めた出口を考えることが欠かせません。
