効果10:唾液を通じて口の中を守る環境づくりに役立つ
唾液には、口の中に残った食べ物や糖を流しやすくしたり、酸を中和したり、歯を守る環境を保ったりする役割があります。そのため、噛むことで唾液が出やすくなること自体には意味があります。ただし、むし歯を防ぐ効果について強いデータがあるのは、主に食後のシュガーレスガムのように唾液分泌を促す方法です。普通の食事をよく噛むことと、その研究結果をそのまま同一視することはできません。
口の健康を保つうえでは、歯みがきや定期的な歯科受診も重要です。よく噛むことだけでむし歯や歯周病を防げるわけではありません。それでも、よく噛める歯と口を維持することは、いろいろな食品を食べ続けるための土台になります。噛むことと「噛める口」をセットで考えると、意味がよりはっきりします。
唾液には歯の表面を守る成分や、口の中の酸を中和する働きがあります。ただ、食事をした直後は糖や酸も口に入っています。だからこそ、唾液の働きだけに頼るのではなく、歯みがきなどの基本的なケアを組み合わせることが大切です。噛むことは口の環境を助けますが、歯科ケアの代わりではありません。
効果11:脳の働きとの関連が研究されている
咀嚼と脳機能の関係は、近年とくに研究が増えている分野です。2023年の系統的レビューでは、成人を対象にした20件の研究を整理し、高齢者では咀嚼機能が低い人ほど認知機能の成績が低い傾向が報告されています。若い成人では、ガムを噛むことで認知課題の反応時間に変化がみられた研究もありました。
ただし、ここは「よく噛めば認知症を防げる」と言い切れる段階ではありません。関連を示す研究の多くは観察研究で、噛む力の低下と認知機能低下が同時に起きている可能性もあります。2024年のレビューでも、関連は示される一方、原因と結果を確定するには長期的な研究が必要とされています。脳に良いというより、「口を使うことと脳の状態には関係がありそう」というところから理解するのが適切です。
高齢者の認知機能と咀嚼機能の関連は、歯の本数、栄養、身体活動、社会的な生活など多くの要因と重なっています。よく噛む習慣だけを取り出して認知症予防と呼ぶのは早計です。一方で、噛める状態を保つことが食事や会話の維持につながる点は重要で、口の健康を軽視しない理由になります。
