小顔目的で硬い物を噛み続けるのは逆効果になることもある
咀嚼筋は筋肉なので、負荷が増えれば適応する可能性があります。一方で、顎の関節や周囲の筋肉に痛みがある人にとっては、長時間のガム噛みや硬い食品の食べ続けが負担になることがあります。噛むことは健康的だからと、顎が疲れるほど続ける必要はありません。
美容に関して大切なのは、「たくさん噛むほど美しくなる」という発想を避けることです。食べ物を落ち着いて噛み、必要な量を食べて、口の健康を保つ。これだけでも十分に価値があります。顎の痛み、口が開けにくい、噛むと音がするなどの症状がある場合は、回数を増やすより原因を確認することが先です。
ガムを使った研究では、半年間の咀嚼トレーニングで咬筋の厚さなどが測定されています。つまり、噛むことが顔の筋肉へ何の作用もしないわけではありません。一方、筋肉の変化と「小顔」は同じ意味ではありません。むしろ筋肉が発達すれば、輪郭が細くなるとは限らないため、美容目的で過度に噛む方法には慎重さが必要です。
よく噛むことと「食事に時間をかける」は少し違う
噛む回数だけを増やしても、ひと口の量が大きければ食事全体のテンポが速いままになることがあります。反対に、ひと口を小さくして自然にゆっくり食べれば、30回に届かなくても早食いはかなり改善できます。つまり、噛む回数は目的ではなく、食べる速度を整えるための手段の一つです。
研究でも、5分で食べる条件と30分かけて食べる条件で、満腹感に差が出た試験があります。ただし、食欲に関わるホルモンの変化は研究によって一致しませんでした。このことからも、「噛む回数」だけで人の食欲を説明するのは難しいと分かります。ひと口の大きさ、食事時間、料理の硬さをまとめて考える必要があります。
ゆっくり食べても、摂取カロリーが多ければ体重は増えることがあります。逆に、ある人は早めに食べても一日の総量を適切に保てるかもしれません。研究で平均的な関連があっても、個人差がなくなるわけではありません。よく噛むことは、すべての人に同じ効果が出る「スイッチ」ではなく、食行動を整える選択肢の一つです。
