噛みごたえのある食品は、回数を増やしやすい
同じ量の食品でも、硬さや繊維の多さによって必要な咀嚼量は変わります。一般に、やわらかい料理より、根菜や葉物野菜、きのこ、適度に歯ごたえのある肉などのほうが噛む回数は増えやすくなります。これは「硬い物を食べれば健康になる」という意味ではなく、自然に噛む時間を作りやすいということです。
一方で、食べやすさは年齢や歯の状態で大きく変わります。高齢者や口腔機能が低下している人に、硬い食品だけを勧めるのは適切ではありません。厚生労働省も、食べ物を「よく噛める」口の機能を保つことと、窒息や誤えんを避けることを重視しています。噛む回数を増やす前に、自分が安全に食べられる食品を選ぶことが大前提です。
噛みごたえのある食品は、咀嚼回数を自然に増やせますが、食べにくさとは別です。硬さが強い食品や大きな塊を無理に選ぶと、顎や歯への負担が増えることがあります。特に入れ歯や歯の治療中などで噛みにくい人は、食品の硬さを調整してください。「たくさん噛める食品」より「安全に食べられる食品」を選ぶのが基本です。
朝食で意識すると、食べ方の違いを感じやすい
咀嚼の研究には、朝と夜で結果が違ったものがあります。健康な若い男性に米を食べてもらった研究では、40回噛んだ条件で朝のほうが食後の血糖の変化が小さく、30分後のインスリン分泌も増えました。これは朝の咀嚼に特別な効果が確立したという意味ではありませんが、食事の時間帯が生理的な反応に関係する可能性を示す結果です。
実生活では、朝は時間がなくて急いで食べる人も多いでしょう。そこで、朝食の一品だけでも落ち着いて食べる方法があります。たとえば、卵や野菜のおかずを先にゆっくり食べ、その後に主食へ進むだけでも、「朝は流し込むだけ」という習慣を見直せます。咀嚼は時間帯とも関係しうるため、朝食は観察しやすい場面の一つです。
朝食でゆっくり食べるのが難しいなら、前日の夜に朝食の準備をしておく方法があります。時間に余裕ができれば、急いで飲み込む場面を減らせます。食事時間そのものを長く取れない人でも、最初の数口を丁寧にするだけで練習になります。研究の朝夕差は興味深いものですが、まずは自分の生活で実行できる範囲から始めることが重要です。
