効果12:食後の消費エネルギーがわずかに増える可能性
食事をすると、体は食べ物を消化したり吸収したりするためにエネルギーを使います。これを食事誘発性熱産生と呼びます。若い女性を対象にした小規模な研究では、ひと口30回噛んで食べた場合、噛まずに食べた場合より食後のエネルギー消費が増えたと報告されました。さらに、咀嚼そのものに使うエネルギーも測定されています。
もっとも、ここから「よく噛むだけで運動と同じくらいカロリーを消費する」と考えるのは大きな誤りです。増える量は小さく、研究も少人数です。体重への影響を考えるなら、食べすぎを抑えやすいことのほうが重要でしょう。よく噛むことは、消費カロリーを大幅に増やす運動ではなく、食事の過程でわずかな変化を積み重ねる行動として見るのが現実的です。
食後の熱産生は、体が食べ物を処理するために使うエネルギーです。咀嚼による増加が報告された研究でも、参加者はわずか10人でした。しかも特殊な条件で行われた実験です。したがって、日常生活での増加量を正確に予測することはできません。「少し増える可能性がある」程度にとどめておくのが妥当です。
美容面で期待できるのは「直接の小顔効果」より食べ方の変化
「よく噛むと顔がすっきりする」といった話を見かけることがあります。ですが、食事をよく噛むだけで顔が小さくなると断定できる十分な証拠はありません。むしろ、よく噛むことで食べる量を調整しやすくなり、長期的な体重管理につながれば、結果として顔まわりの印象が変わる可能性がある、という間接的な考え方のほうが筋が通っています。
また、噛む筋肉は使えば強くなる一方、過剰な負荷は別の問題を起こします。ガムを使った6か月の筋トレ研究では、噛む力や咬筋の厚さが変化した一方、顎の形にも変化が生じうることが調べられました。美容目的で硬い物を長時間噛み続ければよい、という話ではありません。次は「30回」にこだわりすぎない理由をもう少し掘り下げます。
美容を考えるなら、まず睡眠、紫外線対策、栄養、運動などの影響が大きいことを忘れないことです。よく噛むことは、それらの代わりにはなりません。ただ、食事量を整えたり、口元を清潔に保ったり、食事を丁寧に楽しんだりする習慣につながる点では、間接的な意味があります。美容効果を一つだけ切り出すより、生活全体の一部として考えるほうが自然です。
