効果6:食後すぐのインスリン分泌を助ける可能性
インスリンは、血液中の糖を体の細胞に取り込む働きを助けるホルモンです。咀嚼は、この食後の反応にも関係すると考えられています。健康な若い男性を対象にした研究では、朝に米を食べたとき、40回噛んだ条件で30分後のインスリン分泌が増えたと報告されました。同じ40回でも夜には同じ変化が確認されなかった点が特徴です。
これは、噛む回数だけで決まるのではなく、「いつ食べるか」も関係する可能性を示しています。ただし、人数は9人と少なく、すぐに日常の食事へ当てはめることはできません。血糖やインスリンは重要な指標ですが、1回の食事で変わる値だけを見て健康状態を判断することもできません。咀嚼の作用は、時間帯や食事内容まで含めて見る必要があります。
インスリンの「早い段階の分泌」は、食後すぐに血糖へ対応する体の反応です。咀嚼によってこの反応が変化する可能性は興味深いものの、1回の食事で観察された差を長期的な健康効果へ直結させることはできません。体の反応を知る研究としては価値がありますが、日常生活では食事全体の質を優先するのが基本です。
効果7:胃の働きに影響し、食後の流れを調整する
噛むことは、胃の動きとも関係します。健康な成人を対象にした研究では、食事中に咀嚼した条件で、胃の最初の排出が遅くなったと報告されています。これは胃の中に食べ物がとどまる時間が長ければ単純に良い、という意味ではありません。むしろ、食べ物が入ってきた直後の胃の動きが、咀嚼によって一時的に変化することが示されたものです。
食後の胃では、食べ物を混ぜたり、少しずつ先へ送ったりする動きが続きます。噛むことで食べ物が細かくなり、唾液も加わりますから、胃に届く食塊の状態も変わります。そのため、咀嚼は口だけの働きではなく、消化管全体へ信号を送る行動として研究されています。次は、その入口である「唾液」と消化の準備を見てみましょう。
胃の排出は、速ければ良い、遅ければ良いというものではありません。胃は食べ物を適切な速さで十二指腸へ送る必要があります。咀嚼による一時的な変化は、その調整機構の一部を示すものです。胃もたれや腹痛などがある人は、よく噛むだけで症状を解決しようとせず、必要に応じて医療機関へ相談してください。
