咀嚼は食べ物を細かくするだけではない
噛むことは、食べ物を小さくして飲み込みやすくするだけの作業ではありません。歯で食べ物を砕き、舌で位置を整え、頬の筋肉でこぼれないようにまとめます。その間に唾液が加わり、口の中で飲み込みやすいまとまりが作られます。消化の最初の段階が、胃に入る前から始まっているわけです。
唾液には食べ物を湿らせる働きのほか、でんぷんの分解に関わる酵素も含まれます。研究では、唾液が味を感じることや、飲み込み、消化の初期段階にも関係すると整理されています。ですから「よく噛む」は、胃に届くまでの準備時間を長くする行為ともいえます。ここから先は、具体的にどんな変化が期待されているのかを順番に見ていきます。
口では、歯だけでなく舌や頬も重要な役割を担います。舌が食べ物を歯の上へ運び、頬が外へ逃げるのを防ぐことで、効率よく噛めます。つまり、咀嚼は「歯で砕く」だけではありません。噛む回数を意識するときも、口の中で食べ物をまとめてから飲み込む感覚を大切にすると、動作の意味が分かりやすくなります。
効果1:満腹感を感じやすくなる
よく噛むことが注目される最大の理由の一つが、満腹感です。同じ量を食べる場合でも、ひと口を長く噛むと食事そのものに時間がかかります。その間に口や胃からの情報が脳へ送られ、食事を続けるかどうかを判断する時間が増えます。少人数の試験では、ひと口30回噛んで食べた条件で、食後の満足感が高くなったという結果もあります。
ただし、「噛む回数を増やせば必ず強い満腹感が出る」とまでは言えません。食事内容、食べる速さ、参加者の体格などで結果が変わるからです。それでも、急いで飲み込むより、食事の時間を確保して味わうことが満足感につながりやすいという方向は複数の研究で確認されています。次に重要なのが、その満足感が実際の食べる量にどうつながるかです。
満腹感には食事の内容も大きく関係します。たんぱく質や食物繊維を含む食事と、液体に近い食品では、同じカロリーでも食べた感覚が違います。よく噛むことだけに注目せず、「何を、どのくらいの速さで食べたか」まで合わせて見ると、なぜ日によって満足感が違うのかも理解しやすくなります。
