深海の生き物が長寿になりやすい理由
深海には、長寿の生き物が多いことが研究で繰り返し示されています。深海は暗く、水温が低く、食べ物も海面近くより少ないことが多い環境です。こうした条件では、体の成長や活動がゆっくりになる傾向があります。実際に、深海サンゴや深海海綿は非常にゆっくり成長し、骨格に長い時間の記録を残します。急激に成長する必要がない環境では、何百年、何千年という時間をかけて体を作っていく生き方が成立します。ただし、深海だから必ず長寿になるわけではありません。
研究では、深さと寿命の間に傾向が見られる一方、種による差も大きいとされています。環境に適した生き方が積み重なった結果として、極端な長寿が現れていると考えるほうが自然でしょう。海底の環境は場所によって大きく違います。温度、酸素、餌、流れ、捕食者の数などが組み合わさるため、「深い場所ほど長寿」と一括りにするのではなく、生活環境全体を見る必要があります。
数字だけでなく、暮らしている場所や体の仕組みまで合わせて見ると、この長寿記録がなぜ生まれたのかが見えてきます。
冷たい海は長寿に関係している?
今回登場したホッキョククジラ、グリーンランドサメ、アイスランド貝はいずれも冷たい海に暮らします。低温では体の化学反応や成長がゆっくりになるため、長寿と関係している可能性があります。しかし、「寒いほど長生きする」という単純な法則があるわけではありません。寒い地域でも短命な生き物はたくさんいますし、暖かい場所にも長寿の生き物は存在します。重要なのは温度だけでなく、食べ物の量、外敵、成長速度、繁殖の仕方などが一緒に作用することです。
つまり冷たい海は一つの条件として注目されますが、それだけで長寿のすべてを説明できません。では、長寿生物はなぜ大人になるまでにそんなに時間をかけるのでしょうか。その答えには、生き残り方の違いが関係しています。低温は生物の活動速度と関係しますが、それだけで寿命が決まるわけではありません。今回の長寿生物を見ると、低温に加えて成長の遅さや成熟の遅さが重なっていることが分かります。
