わずか73秒で何が起きた?
チャレンジャーは1986年1月28日、午前11時38分に打ち上げられました。NASAの資料では、約58秒付近に右側固体ロケットブースターの接合部から高温ガスが漏れた兆候が確認され、その後に異常が進み、約73秒で外部燃料タンクの構造が失われました。つまり、最初の異常から重大な破壊までの時間はわずかでした。
事故を生んだ現象は一瞬でも、その前には長い経緯があります。Oリングの侵食は過去の飛行でも確認されていましたが、重大事故につながらなかった経験から、危険の大きさを低く見積もる傾向が生まれていました。ロジャース委員会は、このように「前にも起きたが大丈夫だった」という経験が安全基準を下げる方向へ働いたことを問題視しています。
NASAの資料には、飛行中に最初の異常が現れた時刻が細かく記録されています。こうした時間軸を追うと、事故が「突然の爆発」ではなく、異常が段階的に拡大した出来事だったことがよく分かります。
「Oリングだけが原因」と考えると見えないもの
事故後に目立ったのはOリングの問題ですが、ロジャース委員会は、原因を部品一個の不良だけにはしていません。接合部の設計が低温などの条件に敏感だったことに加え、試験や評価、異常への対応が十分でなかったことが指摘されています。また、技術者の懸念を管理側へ伝える仕組みも問題になりました。
委員会の勧告には、固体ロケットの設計変更だけでなく、安全部門の独立性や情報共有の改善も含まれました。ここから分かるのは、事故を生む「一つの判断」は、たいていその判断を支える組織の仕組みとセットだということです。次のページでは、こうした反省が具体的にどんな制度の変更につながったのかを見ていきましょう。
もし部品交換だけで終わっていたら、同じような問題を別の場所で繰り返した可能性があります。事故後の対応が組織改革まで及んだのは、現場の技術だけでは解決できない問題が見つかったからです。
原因を部品一つに絞ると、警告をどう扱ったかという人間側の問題が抜け落ちます。技術と判断を一緒に見ることが再発防止には必要です。
