ディープウォーター・ホライズンで何を確かめていた?
2010年4月20日、メキシコ湾の海上掘削施設ディープウォーター・ホライズンで爆発と火災が起き、11人が亡くなりました。事故前の現場では、マコンド油井を一時的に閉鎖する作業が進められていました。その途中で行われたのが、井戸の底に入れたセメントがきちんと流れを止められるかを確かめる「負圧試験」です。
簡単にいえば、水などの圧力を下げた状態を作り、井戸の中から油やガスが上がってこないかを見る試験です。米国化学物質安全性委員会の調査では、この試験について、現場が成功と判断するための明確な基準や、異常が出たときの対応手順が十分に用意されていなかったことが指摘されています。
負圧試験は、井戸の密閉が保たれているかを確かめる重要な確認でした。だからこそ、合格の条件が曖昧なら、現場の人が異常を見ても「許容範囲」と受け取る余地が生まれてしまいます。
検査は「やったかどうか」より、結果を見たあと何をするかまで決まっていることが重要です。異常時の行動が曖昧だと、同じ数字でも判断が分かれます。
「合格」とされた検査の異常値
負圧試験では、通常なら説明が必要な圧力の変化が観測されました。ところが、最終的には試験は「合格」と判断され、そのまま掘削泥水を海水に置き換える作業が進みました。CSBの報告によれば、現場の行動からは、その異常値が井戸の密閉に失敗している兆候だと十分に認識されていなかったことが読み取れます。
ここで重要なのは、「数値が出たのに見なかった」という単純な話ではないことです。異常値の意味を判断する基準が曖昧なら、同じ数字を見ても人によって結論が変わります。しかも、次の作業に進むほど後戻りしにくくなります。検査そのものより、「結果をどう扱うか」という判断が大きな意味を持つ場面でした。
検査では、数字を見るだけでなく、その数字が意味する状態を決めておく必要があります。異常が出たら誰に報告し、何を止め、何を再試験するのかまで決まっていれば、判断のばらつきを減らせます。
特に安全確認では、「少し変だが予定通り進めたい」という気持ちが入りやすくなります。だから合否の基準は、作業を始める前に明確にしておく必要があります。
