ボパールでは何がタンクに入ったのか?
1984年12月2日から3日にかけて、インド中部のボパールにある農薬工場で、大規模な有毒ガス事故が起きました。インド医学研究評議会の技術報告では、殺虫剤の原料として使われていたメチルイソシアネート、通称MICを約40トン保管していたタンクから、大量のガスが外へ漏れたと説明されています。事故の直前、タンク内では異常な化学反応が進んでいました。
調査資料では、水がタンク610に入り、MICとの反応によって温度と圧力が急激に上がったことが有力な説明として扱われています。ただし、「水が入った」という一つの出来事だけで事故全体を説明することはできません。安全装置の状態、保守、警報、ガスを処理する設備など、複数の問題が重なっていました。
MICは常温でも扱いに注意が必要な非常に反応しやすい物質です。タンク内で反応が急速に進めば、温度と圧力が短時間で上がる可能性があります。だから保管量や冷却などの管理が重要でした。
深夜の工場で何が連鎖した?
異常反応が進むとタンク内の温度と圧力が上がり、圧力逃し装置が作動して大量のガスが放出されました。ところが、漏れたガスを安全に処理するための設備も十分に働かず、冷却や中和、燃焼によって危険を抑えるはずの仕組みが弱っていました。現場で異常が認識された後も、ガスの拡散を十分に止めることはできませんでした。
さらに、事故は深夜に発生しました。周辺には住宅が広がっており、眠っていた人々が突然刺激性の強いガスにさらされました。インド医学研究評議会の資料では、約50万人が影響を受けたと報告・推定されています。化学事故では、工場の中だけで危険が収まるとは限りません。設備の弱点が、そのまま周辺の生活圏へ広がることがあります。
工場の敷地と住宅地が近いことも被害を広げる条件になりました。危険物を扱う施設では、工場の中で起きる事故だけでなく、外へ出た場合の影響まで想定する必要があります。
事故現場の近くに人が住んでいたことで、工場内部の異常が大きな社会的被害へ直結しました。危険物を扱う施設では、周辺環境まで含めた備えが必要です。
