10数分ではなく40分近く見逃された異変
事故調査では、炭化水素が井戸へ流れ込み始めた後、現場の乗員が異常を認識して適切な対応を取るまでに、約40分にわたる遅れがあったとされています。米国内務省の調査では、ガスが海面まで上がってから爆発するまでにも、複数の防護策が十分に働きませんでした。異常は一瞬で爆発へ変わったわけではありません。
さらに、ガスが高濃度になったことを知らせる警報が出ても、全員へ知らせる一般警報が約12分後まで鳴らなかったことも記録されています。高い危険が迫る状況では、人が気づいて判断するだけの仕組みは不安定です。だから、緊急時には自動で知らせる設備や、迷ったときに安全側へ倒れる手順が重要になります。
事故調査で時間が重視されるのは、対応の遅れがどこで生まれたかを知るためです。異常を最初に見つけた瞬間と、全員が危険を認識した瞬間の差には、安全上の大きな意味があります。
危険の早期発見は、最後の停止装置と同じくらい重要です。早く気づければ、対応できる選択肢も多く残ります。
爆発を止められなかった装置にも問題があった
ディープウォーター・ホライズンでは、井戸からの流れを止めるため海底に防噴装置が置かれていました。しかし、爆発と火災が進んだ後、この装置も完全には井戸を密閉できませんでした。調査では、吹き出した力で掘削管が曲がり、装置の切断・遮断機能が完全に働かなかったことが確認されています。
つまり、「現場がもっと早く気づけば終わっていた」とだけ考えるのも不十分です。検査、井戸の設計、セメント、警報、緊急停止装置などが一つずつ弱かったため、異常が次の段階へ進みました。事故を防ぐときは、最後の装置が失敗した理由だけでなく、その装置に頼る前の段階で何ができたかを見る必要があります。
非常停止装置が最後の防波堤だとしても、そこまで危険が進まないようにする前段の対策があります。前段で止められないと、最後の装置一つに負担が集中してしまいます。
一つの装置に複数の役割を背負わせるより、異なる仕組みで危険を止めるほうが安全性を高めやすくなります。
