「そんなことも知らないの?」
尋ねたとき、説明ではなく「そんなことも知らないの?」と返される。これは質問の内容より、質問した人の知識不足を前面に押し出す言い方です。聞きたいことに答えず恥ずかしさを感じさせるため、人前では特に強く響くことがあります。
この言葉が厄介なのは、知らないこと自体を責める点です。新しい仕事や初めての手続きでは、経験がある人とない人で知っていることに差が出て当然です。それを説明せずに驚いたような反応をすると、知識の差がそのまま人間としての上下であるかのように見せてしまいます。知らないことと、能力がないことは同じではありません。
もちろん、親しい人が冗談で使い、すぐに説明してくれるなら、深い意味がない場合もあります。見分ける手がかりは、そのあとに答えを教えてくれるかどうかです。質問するたびに笑われたり、周囲の前で何度も繰り返されたりするなら、学ぶ機会を奪う言葉になっています。「知らないので、教えてもらえますか」と話題を戻す方法もあります。
「普通はこうするでしょ」
「普通はこうするでしょ」は、相手の行動を注意するようでいて、自分の基準を誰にでも当てはまる決まりのように扱う表現です。何が普通なのか説明しないまま言われると、相手は理由を聞く前から、常識がない人として扱われた気持ちになりやすいでしょう。
たとえば、家事の進め方、贈り物の選び方、連絡する頻度などは、家庭や職場、育った環境によって違います。自分が当然だと思っている手順が、ほかの人にも当然とは限りません。それなのに「普通」を持ち出すと、意見の違いを話し合う代わりに、相手の考えを最初から間違いとして片づけてしまいます。
注意や助言が必要な場面でも、具体的な理由があれば伝え方は変えられます。「私は先に連絡しておくほうが安心だと思う」のように、自分の考えとして伝えれば、相手にも別の事情を話す余地が残ります。「何に困ったのか」を聞くことが大切です。一方、相手のためと言いながら自分の意見を押し通す言葉にも注意したいところです。
