「今の気持ちに名前をつける」だけでストレスが和らぐ意外な心理の仕組み

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感情の言語化には名前があった

ここまで見てきた研究を一つにつなぐと、「感情を言葉にする行為そのもの」が感情反応の調整に関わっている可能性が見えてきます。この現象は心理学で「アフェクト・ラベリング」と呼ばれます。日本語では、感情を言葉で表すこと、感情に名前をつけることなどと説明できます。単に気分転換するのではなく、今の感情を認識して言葉にする点が特徴です。

2007年の脳画像研究では、否定的な感情を引き起こす画像を見ながら感情を言葉にした条件で、扁桃体などの反応が小さくなり、右側の腹外側前頭前野の活動が高まりました。また、これらの活動の関係から、前頭前野から内側前頭前野を経て扁桃体へ至る調整の流れが示唆されました。これは「言葉にすれば脳が休む」という単純な話ではなく、感情を認識して言葉にすることで、感情処理の経路が変わる可能性を示したものです。

この言葉は「感情に名前をつける」という日常表現を、研究上の一つの概念としてまとめたものです。研究では英語の affect labeling という表現が使われ、感情を言葉で表す課題として調べられてきました。

扁桃体が「弱く反応する」だけでは終わらない

扁桃体は、危険や強い感情に関わる刺激への反応でよく知られています。研究でこの反応が小さくなったことは、感情的な刺激に対する脳の反応性が変化した可能性を示します。一方、前頭前野は計画や判断など、複雑な情報処理に関わる領域です。言葉で感情を捉えるとき、こうした領域が働き、刺激に対する反応との関係が変わったと考えられています。

ただし、「前頭前野が扁桃体を完全に押さえる」という図式にすると単純化しすぎます。脳は複数の領域が同時に働くネットワークです。2007年の研究が示したのは、その一部の活動の組み合わせでした。しかも一つの研究だけで、すべての場面に当てはまる仕組みまで確定したわけではありません。現在も、どの条件で効果が強くなるのか、どの人に効果が出やすいのかが研究されています。

2007年の研究は、右側の腹外側前頭前野と扁桃体の活動が逆方向に関係することも報告しました。そこから、言葉で感情を捉えるときの前頭前野の働きが、感情反応の調整に関わる可能性が考えられています。ここからは、研究で分かってきた仕組みを日常で無理なく使うための手順へ移ります。

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この記事を書いた人

「知ってよかった。誰かに話したくなる。」を合言葉に、暮らし・歴史・言葉・お金・身体・食べ物など、身近だけど意外と知らない雑学を日々調査してお届けしているBest For Youの編集チームです。難しいテーマもわかりやすく、読み終わった後につい誰かに話したくなるような記事づくりを心がけています。